【社長BLOG】仮想通貨業界に必要なこと・資金調達の変化

GEMSEE

 新年、明けましておめでとうございます。2018年は仮想通貨業界にとってはターニングポイントとなった一年だったかと思います。1月のコインチェックから始まった一連の騒動は12月末の「仮想通貨交換業等に関する研究会の報告書」を持って、整理されました。波乱の2018年が過ぎ2019年を迎えましたので、これまでを振り返りつつ今後の動向を予測してみたいと思います。

 

時間を要する仮想通貨業界の立て直し

 

 2018年は日本において仮想通貨に関連するビジネス全般が停滞した一年でした。乱暴に言ってしまうと、仮想通貨・トークンに関連したビジネス全般に蓋をしたような状況でした。既存ビジネスである取引所に対する厳しい検査に加え、未知のリスクを抱えるICOに代表される新規ビジネスに対する牽制によって、国内における新しい試みが商用化に辿り着くには至りませんでした。(我々の不甲斐なさもございます)

 

 「仮想通貨交換業等に関する研究会」による議論によって、表面化している課題に関しては法律改正の目処が立ち、手当てされるものと思います。しかしながら、仮想通貨に関連した事業は現在進行形で日々進化しており、個別サービス・事案を念頭にした規制は、新たなサービス・変化に追い付かないのが現状です。昨年までにはなかった新しいサービスが登場した際、事前に原理原則に基づいた包括的な議論による方針が示されていれば、事業者は不必要な事業リスクを背負う必要はありません。しかし、残念ながら現状はそれには程遠く、事前に想定されていない事業は実質的には許容されていません。

 

 規制の曖昧さに加え、仮想通貨自体が当初想定された用途で普及していないことも誤算です。2014年・2015年頃の仮想通貨は、法定通貨を代替する可能性を持った「決済手段」としての側面が現在よりも強く出ていたと思います。しかし目論見は外れ、決済手段としての仮想通貨は広がらず、投機手段としての仮想通貨が伸びたのが2017年でした。ICOの爆発的な普及に合わせて仮想通貨(トークン)の種類・有する性質が拡大し、多様なプロジェクトが生まれ、そして死にました。そのような状況を反映し、直近では名称も仮想通貨から「暗号資産」へと変更しようという動きもあります。

 

 決済としての仮想通貨の成長は予想通りには進みませんでしたが、一方で、投機としての仮想通貨の広がりが進んだことにより、証券業・資金調達ビジネスとの境界が薄まってきたとも感じています。伝統的な業規制では対応が難しいビジネスが新たに生まれ、これまでの規制された産業と同様の経済効果を、従来とは異なる手段で提供し始めているのが現状です。「経済効果」に着目し、同一の経済効果であれば同一の規制という考え方もあれば、「リスク」に着目し、リスクが異なれば仮に同一の経済効果だとしても規制有無は異なるべきという考えも存在します。何が正解というのは難しいですが、今後も新しい技術に基づいたサービスは無数に生まれることが予測されるますので、規制のフレームワークとして包括的な考え方が示されるべきだと考えます。

 

 今後、仮想通貨業界が浮上するには、以下の対応が必要だと私は思います。

 

  1.  投資商品としての仮想通貨(トークン)のルール整備
  2.  決済手段としての仮想通貨のルール整備
  3.  上記に該当しない仮想通貨(デジタルデータ)のルール整備
  4.  実用的なユースケースの提示
  5.  ユーザー体験の向上

 

 現状の仮想通貨(トークン)の多くは、ビットコインが生まれた当初のような代替的な決済手段を目的としたものではなく、価格変動自体に価値を持たせた投機(投資)商品である場合が多いのが実情です。仮想通貨(トークン)自体に何らかの利用価値(使用価値)が付与されているケースがほとんどですが、大抵は将来の不確実なサービス利用券であり、購入者の目的が「サービスの利用」ではなく、価格の変動による「キャピタルゲインの獲得」である分類が、上記1の『投資商品』です。

 

 上記2に分類される仮想通貨は、ビットコインやXRPのように特定の機能を持たず、決済媒体を意図した仮想通貨です。日本では資金決済法上の仮想通貨に分類されますが、この分類の仮想通貨の対応は国毎に異なります。

 

 私は、上記1・2のどちらにも該当しない仮想通貨(デジタルデータ)という分類が更に明示されることが望ましいと考えているのですが、「仮想通貨交換業等に関する研究会の報告書」では、この点については、あえて言及せずという形でした。しかし、金融規制に服さない仮想通貨(デジタルデータ)の定義・条件についても報告書に加えるべきであり、事業者のニーズが最も高いのもこのパターンかと思います。以前、「第三のICOの可能性」で頭出ししたものです。

 

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 このタイプは1の投機性とサービス利用性を逆にしたような立ち位置です。特定のサービスにおける利用が主であり、譲渡性に伴う価格の変動が従である、という構成です。一定の価格変動は想定されるけれど、その変動幅は他の商品の需給による変動と大差はありません。このような性質を持つ仮想通貨(デジタルデータ)の扱いが日本では不明確であり、事業者は実質的に個別案件の判断を都度、金融庁に確認するという手間を強いられます。

 

 上記が仮想通貨の用途による類型整理であり、1と2に分類される仮想通貨の顕在化しているビジネスについての検討結果が、前述の「仮想通貨交換業等に関する研究会の報告書」に纏められています。3に関しては言及すらされていないので今後も数年単位でグレーゾーンとして残り続けると思われます。3の領域に存在するリスクを適切に処理しつつ、ビジネスとして再構築することができれば、「伝統的な資金調達・クラウドファンディング・仮想通貨」の要素を組み合わせた、新しいファイナンス手法を提案できるのではないかと思います。

 

 4と5は同時に検討が必要な課題で、ユーザーの利用シーンを想定する必要があります。そもそも仮想通貨・各種トークン・ブロックチェーン技術全般はどのようなシーンで利用されるのが適切なのでしょうか。B2B・B2C・C2Cと様々なシーンが想定され、利用される用途・業務ケースも様々です。数多くのPoCを通じてユースケースの妥当性検証が行われていますが、最適解は未だ見いだせていない認識です。仮に最適解となるユースケースを見いだせたとしても、次の課題として「ユーザー体験の向上」が挙げられます。現状、仮想通貨のユーザー体験は良いものとは言えません。利用者自身に一定レベルの知識・前提となる行為を求める場合もありますし、十分に普及していない為、UXの作り込みも不十分で、何かと操作に手間がかかることが多いのが現状です。最適なケースを発見した後は、既存の手段と比較し、遜色のないレベルまでユーザー体験を高めることが必要だと思います。

 

 利用の前提となるルールが整備され、最適なユースケースが見つかり、そこにユーザー体験の向上が合わさって初めて、仮想通貨・各種トークン・ブロックチェーン技術全般は本当の意味で普及の下地が完成するのだと思います。どれも2014年ぐらいから事業者を中心に検討されてきましたが、現時点においても完了していないこと踏まえると、産業として立ち上がるにはもう暫く時間を要するのではないでしょうか。2019年は、多くがストップした2018年と比べると、進歩のある年になるかと思いますが、抱える課題が全て解決するには時間が足りない、というのが印象です。事業者として上記課題の解決を目指しつつ、社会的に受け入れ可能なビジネスモデルを構築すること、それが我々の今年の目標となりそうです。

 

資金調達・イグジットにおける変化の兆し


 ここ数年、資金調達を望むベンチャーにとって、とても素晴らしい環境が続いてきました。Fintechに代表されるX-techブームの中、過去と比較すると、様々なベンチャーが数億~数百億単位の資金を比較的容易に獲得してきました。組成されるファンドが大型化されるに伴い、VCの財布の紐は緩くなり、調達金額の大型化が進んできました。(一種の過剰流動性の結果ですが、それによってベンチャー業界が伸びたのも事実です)投資家層が厚くなったことで様々なラウンドの資金調達ニーズに対応できるようになり、ユニコーンの大型調達にはソフトバンクの10兆円ファンドのような超大型ファンドが資金を拠出し、数億~百億規模の調達には既存のベンチャーキャピタルが資金を拠出し、数千万円規模の調達ではシードアクセラレーターやエンジェル投資家が資金を拠出する構図が出来上りました。これまではミドルレンジのベンチャーキャピタルが中心でしたが、ここ数年は大型投資家と小口投資家の厚みが増した感があります。大型投資家の登場はユニコーンの増加とも比例しており、これまでの北米中心から、中国を中心としたアジア地域の案件の大型化が顕著な動きとして挙げられます。小口投資家の変化としては、クラウドファンディングの普及による細分化とアマチュアの市場参加が顕著です。(日本でも投資型のクラウドファンディングの制度改正がなされ、サービスが立ち上がりつつある状況です)

 

 ベンチャーファイナンスへの個人投資家の参入はICOによって加速しました。ただしICOに関しては投資のフレームが出来上がる前に投機が加速したことから、一部で設計不良が原因の悪質なプロジェクトも生まれました。(そして死にました)上場企業への投資に比べ、より不確実性が高いベンチャー投資には、自身による情報収集と分析・自己責任が強く求められます。昨今の個人投資家によるICOを含むベンチャー投資には、この覚悟が足りなかったのではないかと思います。しかしながら、今後ベンチャー投資の原理原則を理解した個人投資家が増えることで、投資家層の厚みは確実に増し、判断基準が機関投資家と異なる個人投資家が増えることで、これまで資金調達が困難であった業種・業態にチャンスが生まれるのではないかと思います。短期的には混乱が発生するかもしれませんが、中長期的には間違いなくプラスに作用すると思います。

 

 投資家層の多様化とあわせて、資金調達手段の多様化も昨今のトレンドではないかと考えます。伝統的なエクイティファイナンス・デットファイナンスに加え、仮想通貨やクラウドファンディングなどが登場し、従来基準・尺度で測ることが難しい案件・プロジェクトが増えてきたように感じます。これについては、“資金調達自体は手段であり目的ではないので都度、最適な手法を選択すればよい”というのが私の持論です。重要なのは様々な選択肢の中から、客観的に最適な手法を提案・アレンジする能力ではないかと思います。事業を加速させる最適なファイナンスを提案し、執行までをプラットフォームで完結させることで、起業家にとってより付加価値の高いサービスが提供できるのではないかと考えています。そのような場として機能するよう、我々は「GEMSEEプラットフォーム」を作り上げていきたいと思います。

 

 また、“イグジット手段としてのM&Aが今後は加速していく”というのが、出口戦略における私の相場感です。SBI CapitalBase創業時からこの考えに変化はなく、これまでのIPOオンリーであった出口戦略において、今後はM&Aによるイグジットが加速すると思われます。そして最終的にはIPO・M&Aのどちらでもない未上場のまま留まるイグジット手法を提案できればと考えています。これには未上場マーケットにおける流動性確保という難題解決が必要ですが、IPOもM&Aもせず、創業者・投資家のキャピタルゲインを確保しつつ、未上場のまま事業を継続し成長し続ける事業モデルがあっても良いと思います。上場しないことのメリットが大きいことから、ステークホルダーが満足できるフレームを構築できれば、新しい企業統治として受け入れ可能なのではないかと密かに考えています。上記の「未上場企業の持続可能な成長モデル」に関しては別の機会で触れられたらと思います。

 

お知らせ

 

最後になりますが、年末にコーポレートサイトのデザインをリニューアルいたしました。SBI CapitalBaseという会社の価値観や目指す方向性についても少し書きました。あわせて、採用情報も更新しています。「エンジニア・管理部責任者・内部管理統括責任者・審査責任者(担当者)」の職種の要項を掲載しています。ご興味のある方は、お問い合わせからご連絡ください。いきなり採用面接ではなく、若手社員とのカジュアル面談等、柔軟に対応します。詳細は下記をご確認ください。

 

sbicb.co.jp