【社長BLOG】ユニコーンの成長と資金調達について

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 ベンチャーファイナンスにおいて“ユニコーン”と呼ばれる成長期待の高い大型ベンチャー企業に注目が集まり、調達額の肥大化が著しい昨今の状況について、過去の動向・今後の展開について整理したいと思います。

ユニコーン誕生の背景にあるVCマネーと過剰流動性

 近年、ユニコーンと呼ばれるベンチャーが珍しくなくなってきました。以前は、時価総額で10億ドル(約1,100億円)超の時価総額のベンチャー企業は稀でしたが2014年頃からその数は急速に拡大しました。ユニコーンの拡大の背景として市場が期待するビジネスモデルの変化・過剰流動性による投資判断基準の低下・大型ファンドによる大型投資の促進、などが挙げられます。

 

 以前に比べ投資家は多数のユーザーを抱え込みスケースするプラットフォーム・インフラ型ビジネスへの投資に傾斜しています。このタイプのビジネスはモデルが完成するまでの投資額が圧倒的に大きくなる傾向があり、勝者総取りの傾向があるため、各社ともに赤字状態のままひたすらに成長を目指し掘り続け、資金をVC等の機関投資家から調達しては収益化を後回しにして、投資を継続する傾向にあります。

 

 世界的な金融緩和による過剰流動性の恩恵によってベンチャー企業の資金調達はここ数年好調に推移してきました。ファンドが大型化することで1社あたりの投資額も増加傾向にあり、数十億円~数百億円規模の大型調達に関する記事を目にする機会も増えてきています。また不況期に比べ投資家のリスク許容度が高まり、事業が高成長している限り、赤字状態が継続していても、早期に収益化を求める圧力が低下している実態があります。財布の紐が緩んだ状態とも言えますが、LP投資家もファンドを運用するGP投資家も第ニのFacebookを狙っており、起業家もそのような背景を理解し、グローバル市場を対象とした大きな絵を投資家に見せることで大型の資金調達を実現しています。

 

 その結果、ここ数年でユニコーン・デカコーンと呼ばれる企業が米国・中国を中心に急増しグローバルでサービスを展開しユーザーを獲得しています。これらの企業に多くみられる傾向として、「グローバル展開・プラットフォーム型・シェアリング・B2C」といった特徴が挙げられます。ユニコーン筆頭のUber・Airbnb、ソフトバンクの大型投資で注目を集めた、WeWork・字節跳動なども上記の特徴を兼ね備えています。逆に言うとこれらユニコーンの傾向を細かに分析することで、大型資金調達が可能なビジネスモデル・条件が見えてくるとも言えます。大きな相場変動が起きない限り、もうしばらくは上記傾向が継続するのではないかと思います。ただし、金融資産の買い支えの変化・金利の変動による資金の逆回転が起こった場合、急激にマーケット環境が変化することが予測されるので、起業家の戦略としては調達できるタイミングで資金を調達しておくことが重要かと思います。

 

 世界を変えるユニコーンのビジネスモデルとリスク

 ユニコーンの成長過程・ビジネス戦略を俯瞰すると、赤字を恐れず突き進む姿が浮かび上がってきます。一般にベンチャー企業はエクイティファイナンスを活用し外部から資金を調達し短期間で高成長を目指します。その過程において戦略的に赤字を出しつつ、成長を優先することは理に適っているとも言えます。

 

 ただ、最近のベンチャーの傾向として赤字の長期化(収益化が遅い)、赤字幅がとてつもなく大きい(成長投資がとてつもなく大きい)という傾向があります。投資家としては悩ましいところですが特徴として、「収益化までに時間がかかる傾向、グローバル同時展開による多額投資の必要性、収益単位が小さく大量のユーザー獲得が必要」などが挙げられます。上記ビジネスモデルは景気(相場環境)に左右され、供給側の懐事情の影響を受けやすいことから持続性の観点からは維持が相当に難しいモデルかと思います。

 

 赤字を出しつつも積極的な投資を実施している企業の代表例としてAmazonがしばしば挙げられます。Amazonの場合はPL/BSを注意して眺めると、意図的に無配で内部留保を蓄え、余剰資金を研究開発等で調整していることが分かります。これはよく知られた事実ですがAmazonは市場シェア・ビジネスモデルの確立・新ビジネスへの投資のために意図的に赤字を作り出していました。(投資CFを見ると一目瞭然です)逆に収益化にシフトすれば一気に利益を計上することが可能です。

 

 一見するとユニコーンの成長を優先し赤字でも投資を続ける姿はAmazonのモデルと重なります。非公開企業であるユニコーンの財務状況の詳細に関してはブラックボックスですが、稼ぐ力・経費の使い方の2点においてAmazonとは大きく異なるのではないかと思います。相応の売上を上げているベンチャーも一部で見受けられますが一般には、事業の参入障壁が低かったり・市場シェアが確立していない場合が多く、競合との競争圧力に晒されており、短期的に市場でのポジションが変化する可能性が高いケースが多いです。また資金使途に関する情報を収集していくと容易に巨額の資金を調達できる環境ゆえか、大雑把な使い方を記事等で見かけることが多いです。この辺りは固定費と変動費の巧みにコントロールし圧倒的な効率で筋肉質な経営を実現しているAmazonとの差ではないかと思います。(Amazonの倉庫が驚くほどハイテクで自動化され効率的なのは有名かと思います)

 

 リスク要素を整理すると、経営の前提として巨額資金の調達を前提としていること、収益化まで時間が長く見通しが不明確であること、参入障壁が低く競合他社との差別化、ブランド維持にコストがかかること、などが挙げられます。ただし一度突き抜けた成長を遂げると、重大な事故や訴訟等に見舞われない限り、独占的なポジションを築くことができるのが特徴です。そのポジションまで勝ち残れた一握りのベンチャーがようやく収益化にシフトする形になります。

 

 日本では昨年、メルカリが上場し話題を呼びましたがメルカリの戦略は正に上記のユニコーンの戦略に近いものかと思います。北米での成長を優先し短期的には赤字を許容する経営方針自体は事業の成長を最優先に考えるのであれば最適解なのだと思います。上場したユニコーンの課題は市場との対話にあり、市場圧力をコントロールしつつ、幅広い株主に経営戦略を理解してもらう必要がある点が非公開企業との大きな違いです。過去のプロ投資家(株主)と上場後の株主は性質が異なるので、その異なる株主の要求に応えていくこともまたユニコーンの課題と言えます。近年は上場にかかるコストや経営コントロールを巡って、上場を避ける傾向が一部で見受けられ、今後のベンチャー企業の統治モデルに影響を与えそうな論点となりそうですが、これはまた別の機会に触れたいと思います。

 

 調達の主流であるエクイティファイナンス

 大型調達の内訳をみるとほとんどが新株発行による増資となります。ベンチャーファイナンスの王道は株式となりますが再確認した形となります。当社は昨年、仮想通貨を用いた資金調達手法であるICOプラットフォーム事業の展開に向け準備を進めてきましたが、トップベンチャー層の資金調達には仮想通貨は含まれておりませんでした。(当然と言えば、当然です。)以前の記事で株式とトークンの違い、権利・義務について触れましたが、出資側としては株式が基本であり、トークンはおまけとして貰えるのであればという感覚かと思います。

 

 ICOに関しては調達後のプロジェクトの経過が気になるポイントであり、「当初予定していたサービス提供が実現できたのか、サービスは本当に価値あるサービスなのか、活発に利用されているのか」など色々と気になります。追跡可能なプロジェクトは時々ウォッチしていますが、計画通り進んでいるプロジェクトには現状、出くわしません。プロジェクトへの投資であるICOと会社への投資である株式取得では意味合いが異なり、それぞれのステークホルダーのゴールも異なります。ICOはプロジェクト品質の向上が第一ですが、株式との違いも含めて、全体の制度設計が重要になってくるかと思います。現状、日本におけるICOは自主規制ガイドライン待ちであり、内容次第でどれだけイノベーティブなアレンジが実現できるか決まってくるので、過度な規制とならないよう祈りつつ公開されるのを待っています。ICOは1年半で市況が大きく変化したので公開された自主規制ガイドライの内容を見定め、ICO事業の再開について判断していきたいと思います。

 

 話を戻すと、エクイティファイナンスが主流ということですが、なぜベンチャー投資においてデットファイナンスの事例が少ないかについても考えてみます。単純にシード・アーリーステージのベンチャーに対しての融資はリスク・リターンの観点から見合わないことが多いことから利用されないのは常識的に考え理解できます。ミドル・レイターステージで事業がしっかり立ち上がり、ある程度売上もある場合はどうでしょうか?この場合は融資による資金調達も検討可能かと思いますが、グローバルでの大型調達を見る限り、株式が圧倒的です。

 

 違いは経営者の考え方によるもので、ある程度の規模で上場を目指す場合、希薄化防止や直近のPLの見え方を意識し収益化へシフトする傾向があります。逆にしばらく上場の意思はなく、ひたすらに成長を目指す場合は赤字状態でもひたすらに掘り続けて事業を拡大させます。時価総額で10億ドルを超えるような企業の場合、後者が多いのだと考えられます。ただし資金調達と事業成長には絶対の正解はないので各社の状況に応じて、ベストな選択肢を選択するべきだと思います。上場前に大きく成長させるか、上場後も継続して成長するかの違いかもしれません。自由度でいえば断然未上場ですが、上場企業の場合は調達の選択肢が広がることもあるので一長一短かと思います。

 

 逆にこれといった確たる手法が確立しているわけではないので、起業家は自社の状況に応じて、「普通株・種類株・ストックオプション、普通社債・劣後債・転換社債、ローン(融資)、仮想通貨、クラウドファンディング」など様々な手法からベストを選択する楽しみがあると言えます。その戦略を一緒に考えるのが我々の役目でもありますので、資本政策・資金調達でどこから手を付けたらわからない起業家の方は、問い合わせからご連絡いただければと思います。今後は調達のマッチングと並行して、コンサルとしての財務戦略・成長戦略アドバイスも提供できればと思います。春頃を目標に昨年のICOとは異なるテーマで相談会を開催したいと思いますので、続報をお待ちください。