【社長BLOG】転換点を振り返って

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 4月になり新年度が始まりました。オフィス近辺を歩いていると新入社員と思しき若者の姿が目に留まります。春は様々な変化が訪れるタイミングであり、組織においては新メンバーの加入や事業計画・方針の発表など、様々かと思います。

 

 今年は各方面においても大きな節目であり、つい先日、「令和」の新元号の発表がありました。4月から労働基準法の改正に伴う「働き方改革」も、企業や働く人々にとっては大きなインパクトがあります。

 今回は「転換点」について触れてみたいと思います。

 

平成の終わりという転換点

 

 冒頭でも触れましたが、今年は「平成」の終わりの年であり、「令和」の始まりでもあります。30年余りの平成は「バブル崩壊」から始まる激動の時代で、金融業界においても「金融ビッグバン」と呼ばれる様々な改革が進み、ネット証券に代表される新しいビジネスが立ち上がりました。

 

 同時に、インターネット産業が急成長した時期でもありました。業界の主役も、初期のYahooに代表されるポータルビジネスから、Facebook、TwitterなどのSNSへと遷移し、Appleによるスマートフォンの開発によって、それらは更なる飛躍を経て現在に至ります。

 

 早いもので、スマートフォンが登場してから10年が過ぎました。その間に様々なデバイスが“スマホの次”を目指して市場開拓を進めていますが、スマートフォン登場の時ほどのインパクトはありません。

 

 ウエアラブルデバイス・スマートスピーカー・AR/VRなどの有望技術に期待が集まってはいますが、現時点においてはまだスマートフォンを超えるインパクトや、実生活におけるライフスタイルの変化はありません。

 

 ただし、過去と比べて明らかに産業の変化するスピードが加速しており、技術革新のサイクルが短くなっていることを考慮すると、次なる革新的変化のタイミングはそう遠くないのではないでしょうか。

 

 「ベンチャー企業」という言葉が普及し、その存在感を表してきたのも、平成という時代の特徴でした。様々な企業が生まれては滅び、その一部が成長し、今日のGAFAに至ります(Appleだけは設立が1976年と他と異なります)。

 

 伝統的な大企業の時価総額を20年程度の期間で追い越し、世界トップの水準まで成長したビジネスが登場したのも、時代が変化した象徴であり、トレンドと言えます。言い換えると、これから20年後には当然のごとく勢力図が塗り替わり、新しい企業が最前線を走っている可能性があります。SBI CapitalBaseは、そのような時代の流れ、技術・ビジネスの変化に対応しつつ、次世代のGAFAの種の発掘と育成を目指していきたいと考えています。

 

組織における転換点

 

 組織においては、節目に大きな転換点となる出来事が発生します。今年は労働基準法の改正と働き方改革の流れが、組織運営における大きな転換点となります。

 

 時代とともに求められる組織像・運営体制は異なります。今回の改正では、罰則付の残業規制が話題に挙がることが多いですが、個人的には「同一労働・同一賃金の原則」「高度プロフェッショナル制度」「3ヶ月のフレックスタイム制」に注目しています。

 

 昔から労働時間の削減・管理は重要なテーマとして取り上げられていましたが、今回の改正では「質・中身」の見直しに着手している点が、現在の労働環境の実態に踏み込んだ対応と言えるでしょう。

 

 バブル崩壊やリーマンショック等の環境変化を受け、日本でも雇用の流動化が進みました。非正規雇用の増加・多様化、転職市場の拡大、プロフェッショナル人材の独立等の流れが加速し、主体が「組織」から「人」にシフトしつつあることを感じます。終身雇用と年功序列の見直しが進んでいる以上、改革は避けられないテーマだと思います。

 

 「同一労働・同一賃金の原則」「高度プロフェッショナル制度」「3ヶ月のフレックスタイム制」に関しては、ベンチャー企業では既に実態としてそのような運用になっていることが多いです。良くも悪くも現実主義・実力主義なベンチャーにおいては、突き詰めると自然とそのような制度設計になるとも言えます。

 

 年功序列がないので、同一職種で同程度のスキル・経験を有して、同程度の成果を上げた社員は、その期間においては同等に評価されるべきですし、全員がゼネラリストである必要もないので、プロフェッショナルとして組織貢献可能な人事評価制度も必須です。また、「成果」という観点に着目すると、毎朝定時に出社することが、必ずしも目的達成のために必要ではないことが分かります。

 

 経営者の観点で評価すると労務管理の難易度が高まった今回の改正ですが、社会情勢の変化を捉え、”法律を実態に近づける”という意味では意義あるものかと思います。

 

 一言付け加えるとすると、グローバルで猛烈な勢いで成長しているスタートアップは、それこそ人生を賭けた勝負を日々繰り広げています。そのような起業家・メンバーに8時間勤務や残業規制と言っても実態とはかけ離れます。仕事が生活の中心となり高みを目指すベンチャーと、成熟産業の中で変化に乏しい業務に従事する労働者を同一のルールで縛ることは、逆に日本の競争力の低下を招くものと危惧します。明確な正解がない難しいテーマですが、「意思に反した長時間勤務を強いられないこと」「国際的な競争力を維持し、頑張りたい人が頑張れる環境」の二つが両立できればと思います。

 

ビジネスにおける転換点

 

 「平成」という時代は、産業の主役が製造業から情報・ITビジネスへと大きくシフトした時期でもありました。GAFAのAmazonやAppleは小売りに属しますが、高度なデータ分析・AI活用、プラットフォームによる仕組みの差別化によって競争優位性を築いています。その裏には膨大なデータとそれを支えるノウハウ、強固なビジネスモデルが不可欠です。

 

 昔はメーカーが商品を製造し、商社や卸しが仲介し、小売店が販売するモデルが一般的でしたが、業界によっては製造小売り(SPA)が伸びてきています。代表的な例としてはユニクロが分かりやすいと思います。製造から販売まで一貫して自社で完結するモデルは、一部の業界とは相性が良いです。自社で全てをコントロールすることで、品質・在庫・価格・利益率、様々な要素のコントロールが容易になります。

 

 インターネットが普及した2000年以降、オンラインビジネスが普及し、ビジネスモデルも多様化してきました。特徴的な変化として「プラットフォームビジネスの普及」「オンプレからクラウドへの移行」「無料・フリーミアムモデルの加速」「サブスクリプションの浸透」「XaaSの拡大」「シェアリングの一般化」などがあげられます。

 

 インターネットが普及したことにより、ビジネスの前提がいくつも変化しました。結果として上記のようなビジネスモデル・サービスモデルが普及し、GAFAのようなグローバル大企業が誕生しました。過去と比べてレバレッジを効かせやすく、短期間・少資本で事業を拡大できるチャンスが持てるようになりました。

 

 ビジネスが「自国を中心としたマーケット」から「グローバル」に拡大すると、そこには各国間の制度摩擦が生まれます。マイクロソフトは、10年以上前からWindowsの販売についてEUと独占禁止法を巡り争っていますし、直近ではプラットフォーマー規制が話題を集めています。

 

 EUは昨年、GDPRでいち早く域内のデータ保護規則を定めました。一般に「独占」というと、政策的な恩恵を受け不当に特定の者が独占することにより、消費者が不利益を被ること、と解されていますが、現在起きている「独占問題」は上記とは種類が異なります。

 

 つまりこれは、政策的独占ではなく、自然淘汰による独占です。単純に圧倒的な消費者利便性により市場占有率が高まり、価格・製品に対するコントロールが強まった結果と言えます。普通にサービスを利用している限り、消費者は特段不満を抱かない点が特徴です。

 

 大抵の便利なサービスの対価は本人が同意したデータの提供であり、収集したデータの活用によってビジネスを強化していくサイクルがここでは形成されています。消費者と企業は「Win-Win」の関係にあると表現でき、そこには不利益を被る当事者はいないように見えます。ではなぜ近年、プラットフォーマー規制が騒がれているのでしょうか。

  

そのキーワードとして、「データ独占」「M&A」「産業保護」「デジタル課税」等があげられます。現状、データがプラットフォーマーに集約されるビジネスの仕組みとなっているため、プラットフォーマーとプラットフォームを利用してビジネスを展開する企業(テナント)との格差が拡大する一方です。

 

 現代のゴールドとも呼ばれるビッグデータの活用により、プラットフォーマーが益々強化される仕組みが問題視されています。これに関しては仕組みを作った方を褒めたい部分がありますが、事業の持続可能性を配慮すると、プラットフォーマー総取りは見直されるべきでしょう。しかし、過度な規制はより良いサービスの提供を阻害するのではないかと思います。

 

 M&Aに関しては、巨大プラットフォーマーが将来のライバルになりそうな有望なベンチャーを買収or潰しにかかる事象を指します。例えば、GoogleやAmazonが創業数年の若いベンチャーを高額で買収する事案がしばしば見られます。これは純投資の場合もありますが、多くは競合の芽を潰すこと、有望な事業を自社のポートフォリオに組み込むこと、優秀な経営陣・エンジニアを抱え込むことが目的です。

 

 一旦、資本力が豊富な巨大プラットフォーマーが登場すると、次のプレイヤーの芽を摘み取るのがこの行為の課題です。買収される側もGoogleやAmazonに買われることを最初からゴールに設定している場合もあるので、是非の判断は難しいですが、ベンチャーが独立して成長可能なエコシステムが、買収の隣に選択肢として存在すれば、より健全ではないかと思います。

 

 産業保護は、正確には”自国産業の保護”となります。巨大プラットフォーマーは、国レベルでみると正に「黒船」です。自国の市場を攻められ蹂躙されるのを見過ごせない、といえば綺麗ですが、保護主義とも言えます。

 

 自由が売りのアメリカですら保護主義に走りつつあるので、グローバルではどこも似たようなものです。特にEU圏はその傾向が強く、プラットフォーマーに厳しく、制裁金も大きな傾向にあります。日本は昨年ようやく議論が始まったばかりで、これからどのように議論が進んでいくか気になります。

 

 個人的には、”結果平等“は誰も幸福にならないと考えているので、適切な競争環境が維持され、常にマーケットに投入されるサービスに改善圧力・期待がかかるような市場・政策であればと思います。

 

 最後に税金です。これが規制・制裁の本音のような気もします。多国籍プラットフォーマーは、各国の税制・タックスヘイブンを駆使して極力合法的に税金を払いません。これは常識です。税法が制定された時代に想定していたビジネスモデルとはかけ離れているので仕方がない部分がありますが、その点を最大限合法的に活用しているのが多国籍プラットフォーマーです。

 

 ここでは多国籍という点がポイントであり、自国のみでビジネスを展開しているプラットフォーマーは対象外です。本来、日本でビジネスをしているのであれば日本に納税となりますが、そう単純にはいかないのが上記の多国籍プラットフォーマーです。

 

 製造業であればまだトレースしやすい部分がありますが、インターネットありきのデータビジネスの場合は困難を極めます。そこで結果として、新たな体系として「デジタル課税」の議論が盛り上がってきているのです。経済合理性を追求した結果として、空いていた穴が埋められた形なので仕方がないと言えますが、特定企業を狙い撃ちにした議論や制度設計に関してはどうかと思います。フェアな競争環境の整備に努めてもらいたいところです。


 現代のビジネスにおいて、主要なビジネスモデル・規制の在り方について非常にざっくりとですが触れてみました。上記の整理は2019年時点の見解であり、10年後のベンチャー業界・グローバルビジネスのルールは大きく変化しているかもしれません。むしろ技術革新のスピードを鑑みると、確実に変化していると言えそうです。

 

 SBI CapitalBaseの将来も、他のベンチャーと同様に未知数です。日々手探りで新たなビジネスを模索していますが、節目において振り返ってみることで見えてくる事実と、そこから繋がる未来があるのではないかと思い、今回は普段の資金調達・ブロックチェーンネタから脱線してみました。