仮想通貨市場のリスク特性と今後への期待

 

仮想通貨市場のリスク特性と今後への期待

SBI CapitalBaseリサーチ担当のファラロンです。

 

2019年4月2日、ビットコインをはじめとした複数の通貨の価格が急騰を記録した仮想通貨市場ですが、その投資性についてはさまざま議論があるかと思います。

 

仮想通貨は、株式や債券などの既存金融市場との関連性が希薄なことから、「リスク回避資産」と見なされるケースが多々あります。今回は、そういった仮想通貨のリスク特性を整理し、改めて今後の仮想通貨市場に期待することをお伝えしていきたいと思います。

 

仮想通貨市場のリスクとは

 

仮想通貨は、決済などのユースケースによる実用性の観点よりも、その高いボラティリティによる投機性で認知されている傾向があります。2017年後半のような、いわゆる「仮想通貨バブル」と言われる価格の高騰は鳴りを潜めましたが、まだまだ既存金融市場に比べてそのボラティリティは高い水準にあると言えます。

 

一方で、仮想通貨は既存金融市場との相関性が非常に低く、仮想通貨のユニークリスクは一般的に他のマーケットに影響されていないことが認識されています。実際、一部の新興国通貨よりもBTCのほうが流動性の観点で優れている場合があり、BTCの値上がりの裏に、新興国のソブリンリスクをヘッジする手段としてBTCへの換金が行われているといった見方もあります。

 

また一般的に、仮想通貨はフェアバリューが定まっておらず、ファンダメンタルズと呼ばれる要素が直接的に価格に影響を及ぼすことがほぼありません。通貨の発行がマイニングやフォージングといったそれぞれのコンセンサスアルゴリズムに基づいていることが多く、中央銀行による金融政策のようなマーケットを意図的に制御する方法がありません。

 

加えて、金利に該当する概念も仮想通貨マーケット全体としては存在していません。そのため、主にマーケットに影響を与えるのは、要人発言、ハッキングなどの事故報道、関連規制の発案・実施、個別プロジェクトのプレスリリースなどになります。しかし、これも相場への影響はまちまちで、明確な判断材料とすることはできません。

 

つまり、マーケットにファンダメンタルズと呼べる要素が現状ないことを理由に、相場の変動はモメンタムによるところが大きくなり、極端な相場の動きを見せるのだと考えられます。直近では、長い下火の期間を経て、ボラティリティが下がり静かになっていたモメンタムが、先日の急騰で上昇トレンドを示しつつあり、ボラティリティがそれを示す形で上昇していると言えます。

 

仮想通貨に期待されること

市場に求められること

 

前段において、仮想通貨市場のリスクについてはモメンタムが非常に重要な要素であると紹介しました。それを踏まえて、今後の仮想通貨市場の在り方について考察していきます。

 

仮想通貨への投資は、その大きなリターンに魅力がある一方で、価格変動による市場リスク以外のリスク(発行体の信用リスクなど)も非常に高いことから、規制による市場の健全化が期待されていました。

 

しかし、オンライン上で完結する投資を制限することは容易ではなく、詐欺的プロジェクトが横行し、その広がりを制するために、トークン販売や発行体に関する非常に厳しい制限が国ごとに課されることとなりました。

 

取引に関しても、高倍率のレバレッジによる過度な投機的取引を制限し、金商法適用下でデリバティブ取引を展開していくことが想定されます。このような状況は、仮想通貨市場の投資家層が移り変わる過渡期であるとも言えます。FXのように、個人がマーケットの大半を占めていた時代から、大口の機関投資家達の参入による秩序あるマーケットへと移行することが求められています。

 

ビットコインETFが盛んに話題になるように、適切なリスクヘッジを前提としたオプション戦略を機関投資家の立場で行うことで、マーケットにさらなる流動性が生まれ、モメンタムのみで動いてしまうような市場から脱却することが必要であると考えられます。そのような状況であれば、オプション市場のボラティリティ(IV)やポジションを参考にトレンドを把握することもできるでしょう。また、流動性の増加に伴い、単一のファンドや大口の個人投資家によって相場の全体感が左右されるような事態も回避できます。

 

機関投資家が安定して参入できる秩序ある市場になり、仮想通貨のインデックスや投資信託などの投資商品が一般的になれば、個人投資家がレバレッジによる差金決済取引現物保有などによる過度なリスクを取ることなく、健全な投資を行うことも可能になります。

 

ビジネスケースとして求められること

 

仮想通貨のビジネスユースは、リップルなどの決済利用が主なものかと思います。しかし、仮想通貨には資金調達の新たなる方法として期待される点もあります。ただし、以前の記事で、ICOによるリスクマネー供給が経済に資するとご説明しましたが、まだまだ発展途上であることは否めません。

 

現在では、有力な大手仮想通貨取引所(BinanceやBittrexなど)が、「IEO」という、取引所が審査から引受を行う資金調達方法を計画または実施しています。特に、Binanceなどは、独自トークンのBNBを用いたIEOを検討していることから、IEOがICOに変わる今後の資金調達方法になるのではないかと期待されています。このIEOについては、また別記事でご紹介します。

 

まとめ

 

現在の仮想通貨マーケットは、モメンタムによるマーケット形成がメインとなっており、ファンダメンタルズが重要な要素として位置づけられていません。しかし、プレイヤーが個人から機関投資家を含めた多様な層へと変化することで、過度な価格変動の抑止・流動性の供給に繋がり、ひいては安定したマーケットの形成に繋がります。

 

また、仮想通貨の投資性が向上することで、IEOなどの投資に個人だけでなく機関投資家の参入も期待されます。そうなれば、投資の判断基準が明確かつ洗練されることで、より良質なリスクマネーの供給と市場の健全化が期待できるのではないかと考えられます。

 

本稿は情報の提供を目的としており、投資の勧誘を行うものではありません。また、あくまで執筆時点の情報に基づいた筆者個人の見解であり、今後の仮想通貨市場に関する参考情報としてご覧ください。