【社長BLOG】日本STO協会の設立と今後の展望

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 前回のブログから約1か月、水面下で動いていましたがようやく法人設立となりました。正式名称は「一般社団法人日本STO協会」となります。

 

金商法の改正で生まれた「電子記録移転権利」を中心にセキュリティトークンと呼ばれる有価証券の取り扱いを担当する認定自主規制団体を目指す組織です。

 

 認定自主規制団体って何?

 認定自主規制団体はその名の通り、認定を受けた自主規制団体です。金商法は金融庁の管轄なので日本STO協会は金融庁の認定を受けた自主規制団体を目指す組織となります。金商法に基づく団体なので会員は原則として金融商品取引業者に限定されます。

 

(第一種業者・二種業者)例外として特別会員・賛助会員というような名称で協会に賛同いただける企業にも加盟いただくケースがあります。

日本STO協会の場合、まだ入会基準を定めておりませんので入会に関しては後日、Webサイト等を通じてご案内できればと思います。(Webサイトは現在準備中です)

 

 参画メンバー・認定スケジュール

 設立時社員として証券会社6社で立ち上げました。(SBI証券・カブドットコム証券・大和証券・野村證券・マネックス証券・楽天証券、50音順)今後、来春の改正金商法の施行に向けて、認定の取得と自主規制を整えていきます。

 

約半年での立上げとなるため、スピードが求められます。会員の募集については自主規制と入会基準が整ってからとなりますので年明け以降になる見込みです。

取り急ぎは11月ごろを目途に自主規制策定に向けたワーキンググループを開催し、検討が必要な事項について議論を深めていきたいと考えております。

 

 STOの定義

金商法上の定義は以下の通りです。

 

  • 金商法2条2項各号にかかげる権利であって
  • 電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されるものに限る。)に表示されるもの。
  • ただし、流通性その他の事情を勘案して内閣府令で定めるものは除かれる。(本件の論点)

 

正直、よくわかりませんね。大雑把に翻訳すると、最初に電子記録移転権利に該当する有価証券はそもそも金商法の2条2項各号にかかげる権利だよ、って宣言しています。これは逆にいうと2条1項に列挙されている有価証券は対象外ですよ、と言えます。

要するに株や債券といった伝統的な1項有価証券はそもそも電子記録移転権利≒セキュリティトークンの対象外ということです。

 

続いて、電子情報処理組織を用いて移転できるものという条件があります。翻訳すると物理的な券面等を発行せずシステムを用いてデジタルな形式で発行・移転・記録されるものと言えます。

条文から判断するに、ブロックチェーン技術・分散台帳を利用しなければいけない、ということはありません。(過去の経緯やこれまでの事例から前提のように捉えられておりますが、法律上は技術を制限しているわけではありません)

 

最後に、ただし一定の条件に該当するものは除外するとあります。これは電子記録移転権利≒セキュリティトークンは前提として流通性が高い想定だけど、当事者間の契約内容やシステム的な制限等によって流通を制限しているような場合は事情を勘案して、1項有価証券扱いしません、という趣旨です。

 

金商法に馴染みのある方であれば上記で概要に関しては掴んでいただけるかと思います。とはいえ、概念としては分かったけど実際のところどういう金融商品なの?という疑問が残るかと思いますので、その点について軽く触れたいと思います。

 

 STOってどういう金融商品?

上記を前提にどのような金融商品が日本におけるSTOに該当するか検討してみます。金商法の2条2項各号にはいくつかの選択肢がありますが、商品設計上使いやすい手法は5の各種組合契約になります。

一応、信託受益権スキームや合同会社等の社員権等も法律上は候補ですが扱いが難しい印象です(良い商品設計スキームをお持ちの方がおりましたらご連絡ください)

 

では具体的に組合スキームを使ってどのような金融商品が検討できるのでしょうか?STOを整理するうえで重要なプロセスとして、STOの定義やユースケースを関係者で擦り合わせることです。

ビットコイン等の仮想通貨の場合は実態として取引が先行し法律が後追いで制定されたため、どのような事業なのか一目瞭然で何を規制すべきか明確でした。

STOの場合は取引の実態が生じる前に法律先行で規制されたため、どのような金融商品が電子記録移転権利≒セキュリティトークンであり、どのような形態で取引されるか証券会社・金融庁含め、関係者の考えが一致しておりません。

まず初めに、ベースとなる考え方の統一を図る必要があり、そこから細部を整えていく必要があります。

 

 STOは元々ICOを起源として米国においてICOを金融規制にフィットさせる形で生まれました。段々とICO的な要素が薄まり金融商品としての側面が強くなり、株や債券と何が違うのかわからない商品も増えてきています。

日本での電子記録移転権利≒セキュリティトークンの定義は前述の通りですが、海外での定義はバラバラでSTOの共通定義は現状存在しません。

よって、ある国で合法的にセキュリティトークンとして発行されたものが日本においては金商法上の有価証券に該当しないことも場合によっては想定されます。

 

 ICOを背景にベンチャーファイナンスの文脈でSTOを語ると、株式の第三者割当増資に代わる資金調達手段として検討することができないかが論点となります。出資=株主(経営関与)であり、貸付=債権者となります。

中間属性の商品はハイブリット証券と呼ばれています。弁済順位で株主よりは優先し債権者には劣後し、アップサイドを含む収益分配では株式に優先し、代わりに株式と異なり議決権は有しない商品などは設計できないでしょうか?

 

純粋にキャピタルゲインを狙い、経営には口出ししないタイプの投資家向け商品に設計することができないかと考えております。投資家が皆、株主として経営に口を出したいわけではありません。

多くの投資家は事業の発展を見守り、当てが外れた場合には売却できる出口が確保されていれば問題ないかと思います。

 

 別の視点で海外の事例を眺めてみると証券化商品のトークン化という事象が見受けられます。具体的には不動産の事例が比較的多く見受けられます。本質的には従来の証券化商品と商品価値は変わらないのではないかという疑問が生じますが、グローバルではこの分類のプロジェクトが多いと感じます。

証券化商品はものによってはスキームが複雑でリスクの所在がはっきりしない商品もあります。10年前のリーマンショックの契機も証券化商品です。電子記録移転権利≒セキュリティトークンの取引がプロだけではなく、個人も対象となると仮定すると商品性には一定の考慮が必要で、複雑な商品は控えるべきかもしれません。

また、単純に金融機関等のオフバランス目的で利用するもの本筋とは違いのではないかと感じています。

 

 證券化と近い領域としてはプロジェクトファイナンス・アセットファイナンスの分野での活用も検討されております。面白い分野ですがプロジェクト毎の個性が強いので、どのように類型化し汎用的に利用可能な設計にするかが課題かもしれません。

一口にSTOといっても色々な方法が検討できるので、取り扱う金商業者は商品にあったリスクの管理が必要となります。コーポレートファイナンスの延長としてSTOを活用する場合はベンチャーキャピタルに近い目線を、ストラクチャードファイナンスの派生の場合は、原資産となるアセットの価値評価が必要となり、求めされる機能が異なります。

加えて、営利性の低い公共性の高い事業やファンビジネスなどに適用する場合などを想定すると、類型化のハードルは更に高まります。本テーマについては今後、自主規制を策定していくなかで議論を深め、使いやすい制度設計ができればと考えます。

 

 STO事業化の課題とは

課題を挙げればキリがありませんが、今回はいくつかの大きな論点について触れたいと思います。

 

  • セカンダリー取引の有無
  • 税制上の取り扱い
  • STOインフラ

 

来春の業務開始時点においては本格的なセカンダリー流通性の確保は難しいと思いますが、将来的にはPTSや取引所での取引環境が整備される必要があります。

日本はPTSの要件が厳しく、現状のままではSTOの取り扱いが難しいので規制の見直しが必要となります。投資家保護の観点からも出口の確保は必要不可欠かと思われます。

海外ではプライマリーとセカンダリーが同時並行で立上げっており、日本でも早晩、本格的な検討が必要となります。

なお、来春の認定取得は業務開始を優先する見込みのため、PTSを含むセカンダリー取引環境の整備に関しては自主規制の主要な論点から除外するつもりです。

 

税制上の取り扱いは影響が大きく短期的にはどうにもできないテーマですが、雑所得ではなく譲渡所得として認識されること、金融税制の適用対象となること、損益通算が可能となること、など投資家目線で改善点が色々とあります。

金融商品としての規制を受ける以上、他の金融商品と比較して著しく劣る扱いを受ける状況はフェアではありませんので業界として利用者側に立った意見を上げていく必要があります。

 

トークンの発行にはSTOプラットフォームと呼ばれるトークンの発行・管理を担う基盤が必要となります。従来のほふり・クリアリング機構に相当する機能です。

細かい話ですがSTOの場合は振替法(社債、株式等の振替に関する法律)の適用は受けず、振替機関のライセンス取得の必要はありません。

ライセンスは必要ありませんが、発行体や証券会社が利用する業界共通インフラは必要となりますので来春以降の業務開始のタイミングでシステム的な手当てが必要となります。

 

 課題が山積みのSTOですが来春の業務開始に向け着実と動き始めています。年内にも協会としてプロパー職員の募集も予定しています。

自主規制機関というと堅苦しいイメージを持ちますが、立ち上げ期の今はベンチャー組織に近い感覚です。会員となる証券会社や外部組織からの出向者に混じって業務に取り組んでいただくことになります。

認定取得まではバックボーンが多様なメンバーと共に混沌とした状況の中、プロジェクトワークに従事する形です。今後はWebサイト・SNS等で情報発信を進めていく予定ですので協会活動に興味のある方はチェックいただければと思います。

 

 

参考記事

www.nikkei.com

 

日本STO協会に関するお問い合わせ

JSTO_project@sbisec.co.jp